【ショートエッセイ】夏になるというのに

「今はこれで良い。」

最近、自分に言い聞かす言葉である。

ここのところ、酷く落ち込んだ日々を過ごしており、ひとりでいる時間はほとんど感情がないような状態になってしまう。

誰かと過ごせるような時には、まだ会話もあり楽しく過ごせるのだけれど、ひとりの時間は否応なしにやってくる。

そんな時間には、どうしてものっぺらぼうみたいに笑顔も無く、ただ時間を過ごすようになってしまう。

機嫌が悪いわけではないけれど、楽しそうな動画を観ていても、表情まで明るくなれない。

楽しいとか、面白いとか感じてはいても、表に出ないのだ。

腹を抱えて笑うとか、涙が出るほどに笑うなど、最後にしたのはいつだろうかと思い返せない。

こんな状態になって2ヶ月ほどしか経っていないけれど、すごく長い時間が経過したように思える。

気が付けば梅雨を越え、夏になろうとしている。

普段なら大好きな夏の到来に心が踊り、何がなくとも気持ちが明るくなるものだが、今年はどうやらこのまま夏が過ぎるのかもしれないとさえ思ってしまう。

悲観をしているかもしれないけれど、今すぐには楽観もできない。

だから、「今はこれで良い」のだ。

無理に楽しいと思う必要もないし、そもそもそれができない。

もちろん、楽しいと思えるように誰かと過ごすなどはするだろうけど、やはりひとりでは楽しめそうにもないことは変わらない。

このまま穏やかではない夏を過ごすことになりそうだが、それもまたひとつ夏の思い出になるのだろうか。