【ショートエッセイ】波がわかるようになれば

ひとつ大きな波を越えた感覚がある。

昨日までに酷く落ち込んでいて、ただ生活することだけで精一杯だったのだが、今日は余裕がある。

思えば投薬を続けてもうすでに1ヶ月が経過していて、薬の効果がちゃんと出ているのかもしれないとも思える。

気分に波があるのは、まだどうしようもないことなのだけれど、昨日までにあった大きな波を越えられた感覚はやはり嬉しいものだ。

主治医からは「回復期に入っているので、しっかりと休養してください」と言われているが、このような状態は、まさに回復期と言えるのではないか。

ただ、油断もしていない。

たぶんだけど、まだ大なり小なりの波は来るだろう。

それには逆らえない。

しかし、自分に訪れた波に飲まれるのか、やり過ごすのか、あるいは波に乗るのか。

自分に決められることは、波に対して何ができるのかだけのである。

今回までは、波に飲まれるだけで苦しんできた。

何もできず、その場にとどまることさえ困難だった。

少しずつ変わったのは、波が来るとわかるようになったことと、波が来る覚悟ができたことだ。

なんとなく波が来るとわかれば、やり過ごすことも可能だ。

もう過ぎた波をわざわざ見つめる必要もないだろう。

次に来る波を見つめながら、今はだた過ごそう。