【ショートエッセイ】まだ霧の中にいる

なんだか深い霧の中にいるように感じる。

少し日が差しているかに見える方へ進んで行っても、ずんずんと霧をかき分けているだけで、自分のいた場所さえもうわからないような状態になる。

戻りたくても、戻れない。

進んだら良いのかさえ、よくわからない。

そんな感じだ。

気持ちの整理がつかないとは、こういう感じなのかと、子供の頃には感じ取れない何かを、心の機微として感じる。

昨日、ひとりで過ごしては、また落ちるだけだということで、数日だけ実家に戻ることにした。

何気なく帰ったので、実家に到着して驚いた。

母が明らかに痩せ細っていたのである。

それは一目で、健康的に痩せたものではないことに気がついた。

話を聞くと、もう2週間も前から調子がおかしかったらしく、先週末に病院にかかっていたようだ。

甲状腺に関わる病で、食事を取れなかったらしい。

それでも母は、来週になれば病院で診てもらえるから、と明るく振舞っているけれど、痩せこけた頬と細くなった腕を見ると、こちらの胸が苦しくなる。

そう思いたくなくとも、悲しいことが続くな、と思ってしまう。

やはり、まだ霧の中なのだろうか。